日本文化と書道

畑中壺竹氏

 
この記事は2004年~2005年に発行致しました「日本の伝統マガジン」に掲載頂いたコラムです。

書線

西洋には書道がないともいえますが、国によって温度差があるようです。
英米には文字を書くことへの関心というものがなくて鉛筆の持ち方などという考えもほとんどないようです。
一方独仏にはカリグラフィがあって文字を装飾的に扱う文化があります。
またフランスでは筆跡鑑定が盛んです。
明治開港以来日本の筆跡鑑定の本はすべてフランスに買い占められてしまって今では日本の筆跡鑑定家はフランスで学んで資格をもらってくるとかいう話です。
敗戦ごろまでは筆跡占いがあったのですがご存知でしょうか。
「一」を筆で書いて形や墨色や大きさなどでそのとき の体調や過去未来を鑑定しました。
詳しくはありませんが現代のフランスの筆跡鑑定もこの流れの上にあるようです。
マチスやピカソなどが絵画作品に日本の線を取り入れたのは日本の書の線に魅力を感じたからでしょう。
日本の書道はこの線を書くことに多大の魅力があります。
線を見ただけで健康状態やそのときの気分が分かる、書は人格なりと言われる所以です。
人生にいい線を書きたいです。
健康に書道!

書道とは何か

外国人に書道を説明するとき、書道は声楽と同じだと伝えました。
○声楽は口と耳の芸術で、文学も含まれます。
●書道は手と目の芸術で、文学も含みます。
★線には発声と同じように
○音色、リズム、ボリュームがあります。
●線質、筆勢、墨量と言い換えましょうか。
○曲に構成があるように
●書道作品にも布置が考慮されます。
○歌のこころがあるように、
●書道作品にも心があります。
★姿勢や呼吸が重要であること、時間的には一過性のものであることも同じです。
○声楽が消えてしまう(録音可能になりました)のに対し、
●書道は筆跡を鑑賞する(ビデオや会場パフォーマンスもできました)あたりが
○耳と
●目の違いから生じる差です。
そしてこの時間や呼吸という要素は書道と絵画とを区別する根本的なポイントでもあります。
さて、これらを基準にすれば、年とってからでも上達するのか、天性の名人は存在するのか、どんな作品がよいのか、これからどう発展するのか、どんな勉強方法がよいのかなど考えられるのではないでしょうか。

学力

脳に欠陥がないのに生じる読み、書き、計算における特異な問題点をさす「学習障害」は西洋諸国に多く日本は少ないことが知られています。
右脳と左脳という見方は西洋の学習障害から見つかりました。
日本に学習障害が発生しにくい理由には、アルファベットだけの言語表記ではないということをあげることができるでしょう。
漢字は図形として一目で理解できる文字です。
多くの文字を持つ日本語は世界一速読できる言語です。
識字率の高さは世界に誇ることができます。
文字は毛筆でゆっくり何度も書いて覚えましょう。
図形記憶力の刺激になり、姿勢や呼吸もよくなって学習能力が高まります。
またそろばんを復活させましょう。
筆算がいくら上達してもそろばんのようには暗算能力が発達しません。
もうひとつ、手先が器用ということも知能の高い民族であり続けた理由ではないでしょうか。
手先が器用だと模倣が楽にできて文化の吸収や伝達が楽です。
日本人は箸を使います。その箸も中国より繊細な形をしています。
人差し指を使うと感性が発達するので、スプーンをわしづかみにして調理や食事をするより日本の箸を使うほうがよいわけです。
小筆と箸は同じ持ち方をします。
食べるのと同じ動作で学習するというのは効率的ですね。
指導すると10歳ぐらいで全員が小筆を正しく使うようになるそうです。
書道とそろばんで世界一の学力に戻ろう!

WEBと書道-時代の要請

文化の発展のために継承と創造が欠かせないのは書道も他の伝統芸術と同じことです。
そしてまた他の伝統文化と同様、書も時代の変遷にともなう大きな転換期を持ちました。
一つは明治維新でペン書きが始まったことです。
西洋文明を真似するのはしゃれたことでした。
横書きも左から右に書くようになりました。
これは算用数字との兼ね合いで、大福帳から複式簿記への転換によります。
また日清戦争で勝利して、教養としての外国語は漢文から英・独・仏語に変わりました。
ローマ字国字論がでたのもこのころです。
二つめはこの流れが昭和の敗戦で決定的なものになったことです。毛筆や武道などアメリカよりも強い国民になりそうな要素はすべて禁止されました。
しかし日本人はここで国語を捨てないという決断をして書写の授業を復活させています。
三つ目はワープロで事務を行うことになって実用書道の仕事が減ったことです。
上手な字を書くことが就職の条件ではなくなり、履歴書はパソコン仕上げでもよくなりはじめています。
これらの転換期に生き延びるために、書道は柔軟に対応してきました。

1.幕府の事務用指定であった「お家流」から古典研究への転換。

2.書は芸術であるとして美術の仲間に入って造形的に面白い作品の制作。

3.はまだ過渡期ですが、私はWEBで活用される書道の発展と考えております。

次回はこの未来について書いてみたいと思います。

WEBと書道-新しい歩み

事務用の手紙を字のきれいな事務員が清書するなどと今どき言うと笑われてしまいますね。
すっかりパソコンに仕事をとられてしまいました。
子供たちも珠算とお習字からダンスやスポーツや音楽や英語に変わりました。
書道はどうなるのだろう、パソコンが書道の息の根を絶ってしまうのではなかろうか、という懸念が生じました。
初めてパソコンを手にしたとき興味をもったのはホームページでした。
いままでのTVや新聞や雑誌と違う表現領域をもっていて面白そう。
まだあまり凝ったサイトは少なかったので、気軽にHTMLでホームページを作ってみました。
内容が何か必要ということで、書道の作品はどのように掲載できるのかを試すことにしました。
その結果わかったことは、音楽など音声はパソコンが対応しきれないことが多くてよくトラブルを生じるのに、画像は問題を生じない、特に白と黒の作品などは圧縮率が自然と高くなるので軽く表示するということでした。
ラジオ・電話・テレビ、と書道にとって不利な伝達システムが続いていたのに、なんと幸運なのでしょう。 他の人たちも別の角度から表現を工夫しています。
画像ソフトで華やかに加工したデジタル書が盛んになりました。
去年のWEB公募書道展にはそれに加えてタブレットで書いた作品が初出品され、好評でした。
書道は新しい歩みを始めています。

WEBと書道-新しい表現手段

WEB公募書道展では作品画像を出品していただいていますが、その内容は巨大作品やTシャツなど色々でとても面白く見せていただいております。
消しゴム印や新聞紙で書いた作品、絵入り、版画風、などなど個性的なものが並びます。
こんなことは今までの書道展ではなかったことです。 WEBで表示できるのは作品集だけではありません。
お手本を書いているところを動画撮影して配信しているサイトもあります。あまり上手とはいえない手書きのコメントとかも掲載されて、肉筆が活字の中で息をしています。
WEBで落書きのできるフリーソフトサイトがありま(した)すが、大人気でアクセスが集中するので置いてもらえるサーバーがなくて今はとあるコミュニティサイトの中だけで楽しんでいるという有様です。
やはりWEBで書道は流行るのではないかと思います。 マウスで書くお絵かき掲示板だけでなく先月ちょっと触れたタブレットも使ってみたい道具のひとつです。
画像ソフトも有料無料いろいろあります。
絵を描くために開発されたソフトがレパートリーを広げる際には「毛筆タッチ」が加えられるあたりはやはり日本だなあ、と思います。
画像加工ソフトでは、色の変換、各種フィルタ加工、レイヤー、アニメGIF、フラッシュなど書作品を彩ることのできる技法がたくさんあります。
WEBを舞台に書道は世界に手軽に発信し、大きく発展することでしょう。

WEBと書道-新しい表現の場1

今私はホームページ制作を職業にしています。書道作品がどう表示するのかという好奇心から派生してWEBの世界に深入りです。
さて、ホームページ作製業者の中で「欲しいソフトは?」という質問が出たことがあります。
すると、「フォント」という回答が一番多かったのです。
これは意外でした。
私がその時欲しかったのは画像加工やフラッシュなど高価で手が出なかったソフトだったからです。そんなものは専門家としては当然持っているものなのでした。
基本的に必要なソフトが揃ったら次に欲しいのは内容ということになるわけで、写真や挿絵などの素材集が出回っています。
フォントもその一つといえます。
このメルマガをどんなフォントでご覧になっていますか。
おそらく等巾フォント数種の中からお選びになっていると思います。
WEB制作の中ではこうしてテキストで表示するところはお読みになる方の好みで見てもらって、画像にして表示するところには製作意図を見せようとします。
たとえばホームページタイトル、ナビゲーション、宣伝文などで何か意図するところがあればそれを表現するのに言葉(撰文)に加えフォントも選びます。
これは書道と同じ発想です。
書道も看板や案内ポスターやあいさつ文を書くときに、隷書にしようか楷書にしようか行書に…と考えます。
さらに本職は筆や墨の色や量など多種多様の工夫を凝らします。
WEB制作業者は市販されているフォントで飽き足らない、もっと色んなフォントが欲しいと思っているのです。
さあ、書道の出番ではありませんか。

WEBと書道-新しい表現の場2

お世話になっている医療機関にドガの「踊り子」が掛けてあります。
魅力的な作品で、わりと人気のないその場所によく見に行きます。
いつ行ってもそこで会えます。ところが日本の絵画や書は掛け軸にしても色紙にしても架け替えて楽しむものでした。
このごろは美術館でしか鑑賞しない人も増えたようですが、昔は自宅の床の間や廊下などでも季節の絵や書が鑑賞できました。
今でもお茶 会で一番の道具は掛け軸で、季節やお客様にあわせた心入れの一品を床の間にかけ、待合にかけて話題にのせます。
この架け替えのできるのがWEBです。
季節に合わせて配色を変えるサイトはよくあります。
もちろん変えずにイメージを固定しているサイトもあります。
自由に画面構成のできるホームページは面白い表現の場であり、鑑賞の場です。
私の「今日も書道/WEB公募書道展」は最近あまり新作を発表しないので、トップページの背景画像などを時々変えて目先だけですが新鮮さを保つようにしています。
6月はWEB公募書道展の作品を受け付けますので度々のぞいてもらえるように工夫したいと思っています。
WEB公募書道展第1回、第2回は自由に参加していただいたのですが、第3回は「楷書」というテーマにしました。賛否両論あって、第4回は「お出かけ前に見る書」としました。
今年はテーマを募集して「大切な人に贈る書」「自由課題」 の2本立てにしました。
第1回から全部削除せずに残していますので架け替えではなく展示場拡大で維持しています。
これもWEBならではの鑑賞方法ではないでしょうか。
また人気投票や来年のテーマ募集など双方向性の楽しみもあります。
素人参加歓迎です。出品、人気投票(懸賞)とも多数ご参加くださいますようこの場をお借りしてご案内申し上げます。

当サイトはボランティアで成り立っておりますので、各種広告スペースが挿入されます。ご了承下さい。